こんにちは。都内のクリニックで働いている理学療法士のあおかずです。
五十肩のリハビリにこんな悩みや思いを抱えていませんか?
・五十肩は時期が過ぎれば自然回復するから介入の必要がないと思っている
・どうしたら早く五十肩が改善していくか分からない
今回は五十肩の理学療法・作業療法で結果を出せるように記事を用意しました。
五十肩は自然に改善していくと言われていますが、実は私たちセラピストの介入が大事です。
なぜなら、私たちは身体に関する知識と技術を持っているから。
一般の人は「肩を動かす」を何も考えずに行って生活しています。そのため、急に肩が動かなくなっても今までどうやって動かしていたか分からないのです。
実際に、私が担当した五十肩の患者さんに肩の動かし方を指導したら20分の介入だけで可動域を拡大することができました。
結論から言うと、理想的な肩の動かし方を指導して運動学習をしてもらうことが大事です。
この記事を読んでからは五十肩の介入が効果的になるでしょう。
結果が出れば臨床に自信がつき、患者さんも満足して両者が得になります。
もっと詳しい五十肩の運動療法や評価を知りたい場合は「五十肩の評価と運動療法」の参考書が実践・理解するのにお勧めです。
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五十肩への介入で大事なことは運動学習
学生時代に五十肩とは痛みと可動域制限が起きるが、ほとんどの症例で自然回復していくと習いました。
しかし、担当してみると理学療法・作業療法の介入が必要だと感じました。
なぜなら、五十肩の人の多くは肩が動かなくなったときに正常動作を知らないからです。
五十肩への介入で大事なことは患者さんに理想的な肩の動かし方を学習してもらうことです。
例えば、肩甲上腕関節を屈曲するときに肩甲骨の挙上が早期に大きく動くと全可動域を動かすことができません。
また、胸椎後彎を強くし、円背姿勢になると肩甲上腕関節の動きを制限します。実際にやってみると体験できますよ。
正常動作を理解したうえで逸脱動作(五十肩の人の動かし方)を評価して、ストレッチや筋トレを指導する、これは理学療法士・作業療法士の力が発揮される場面ですね。
学生時代やセラピストになってから蓄えてきた知識と技術をどんどん活かしていきましょう。
あなたの指導が患者さんの悩みを早く解決できるようになるんですよ。
五十肩で知っていてほしいこと①「疼痛期」「拘縮期」「緩解期」
五十肩へ介入するためにはまず五十肩について知っている必要がありますよね。
詳しくは教科書などで勉強してもらい、ここでは知ってほしいことを紹介します。
簡単にですが、五十肩は男女を問わずに40~50代で好発する、肩関節周辺の痛みと可動域制限を認める疾患で、原因は明らかになっていません。
特に知ってほしいこととは五十肩は病期により症状が異なるという特徴があり、「疼痛期」「拘縮期」「緩解期」と3つの時期があることです。
私たちはそれぞれの時期に沿った介入する必要があります。
肩関節周辺の組織に急性炎症を認めて症状が強い・・・疼痛期
炎症が軽減してくるが肩関節周辺の組織は硬くなり可動域制限を認める・・・拘縮期
可動域制限が徐々に緩解しはじめてくる・・・緩解期
緩解期になると積極的に運動療法を行っていける時期になりますが、安静が必要な疼痛期でも悪化させないための指導が必要です。
治療法は運動療法以外に整形外科医が注射療法、薬物療法、物理療法などを行います。
実際に、担当する五十肩の人が「疼痛期」「拘縮期」「緩解期」どの時期に属しているのかは明瞭にはわかりません。
人は急には良くなりませんから、例えば疼痛期と拘縮期の間の場合もありますよね。
確実に言えることは「疼痛期」→「拘縮期」→「緩解期」の順番はからないということ。
これを理解しておくことで発症からの時間経過と現在の可動域や痛みの程度で大体の時期を理解することができます。
上の例で挙げた時期の場合は肩甲上腕関節の安静肢位の指導をしながら、可能な範囲での関節運動と他の関節の筋力、可動域の維持を図っていくということになりますね。
五十肩で知っていてほしいこと② 肩甲上腕関節のみの症状
五十肩は肩甲上腕関節に問題が生じる病態なので、それ以外の関節は正常であることは知っておきましょう!
例えば、上記で「疼痛期」は疼痛が強くて積極的な運動療法はできないと書きましたが、それは肩甲上腕関節の問題です。
そのため、五十肩による疼痛の強い時期には肩甲帯周囲や頸椎・胸椎の関節可動域、筋力の維持を図っていくことが大事です。
痛みの強い時期の介入では肩甲胸郭関節や肩鎖関節、胸鎖関節などの可動域の確保や肩甲上腕関節の保護する姿勢の指導することが理学療法士・作業療法士の役目だと思っています。
私の経験上、この時期は理学療法士・作業療法士のリハビリ指示が出ない場合が多いです。
なぜなら、
①患者さん自身が自然治癒するだろうと思って受診しないため
②医師も注射や投薬などで様子を見ることがあるから
などが挙げられます。
特に①が多い印象で、「上がらなくなったから来ました」というパターンがよくありますね。
このパターンの場合、肩運動は変な運動学習に変わっており、過剰な緊張や弱化している筋肉が起きている可能性があります。
このことから、五十肩治療の大変さを啓発していくことが必要かもですね。
運動学習するために解決しなければいけない問題点は?
五十肩は40~50代で好発すると書きましたが、実際には20歳代や60歳代以上でも起きます。
猫背や反り腰のように姿勢アライメントが崩れている場合、運動を適切に行うためにまず理想的なアライメントを獲得することが大事です。
五十肩の病期で見ると「疼痛期」が過ぎ、可動域が徐々に改善してきたら肩甲上腕リズムを意識した肩の運動を指導してきます。患者さんがスムーズに肩を動かせられる成功体験を積み重ねて肩の使い方を学習させることが理想的な介入です。
その時に、必要であればストレッチや筋トレを行っていきましょう。またホームエクササイズも指導します。
若い年齢の人は「疼痛期」「拘縮期」「緩解期」のサイクルが短く、ほとんどがリハビリに関わることなく日常生活を送れるようになりますが、問題は高齢者の五十肩です。
なぜ問題なのかというと、高齢者は老化による影響(退行変性)や運動不足の影響で、動作が狭くなってしまうため、間違った運動学習をしているから。
私たちは老化や運動不足を理解しながら理想的な運動に再学習するように介入していく必要があります。
老化による影響
老化は色々な機能が低下します。筋力の低下はもちろん、関節可動域も低下していきます。
関節は軟骨が骨化して可動域が減少するパターンと軟部組織の柔軟性が低下して可動域が減少するパターンが考えられます。
関節可動域が減少すると筋肉の動きが減り筋力低下を起こします。
筋力が低下すると関節を大きく動かすことをしなくなります。そのなると、さらに可動域は狭くなります。
このようにして自分では気付かないうちに使わない部分が身体に増えていくことで、不使用の関節可動域は狭く、筋力は減ってしまいます。
不使用が続くと普段使っている可動域や筋力で日常を送ってしまっていることが間違った運動学習を起こすきっかけになるのです。
運動不足による影響
60代の多くは運動不足です。リハビリ室に来られる方も習慣として毎日散歩をされている人がいますが、それでも私は運動不足だと思っています。
結論から言うと、運動習慣はあっても運動強度が低いということが理由です。毎日同じような散歩だけでは身体(脳)にとっては不十分なんです。
以下の質問の答えをあなたも考えてみましょう。
Q.「筋力トレーニング」や「運動」の言葉を聞いてあなたはどんなイメージができますか?
私の場合、「筋力トレーニング」はジムでダンベルや重りを持ち上げているイメージが浮かび上がってきます。
「運動」は汗をかく程度のランニングをイメージしています。
私のイメージでの回答ですが、気付いてほしいことは2つとも負荷がかかっているのです。
負荷がかかることで身体(脳)は筋肉、可動域を必要と感じて筋肉をつけるまたは可動域を維持・拡大しようと働くわけです。
つまり、毎日同じような散歩では身体(脳)は負荷を感じないため、筋力や体力はつかないと考えています。最低限の能力維持をできるかもしれませんが。
この運動習慣では散歩に使っていない可動域や筋力は減ってしまうことになります。
可動域減少や筋力低下が起きれば間違った運動学習を起こしてしまいます。
逆に言えば、毎日同じような散歩じゃなければいいと思います。
例えば、早歩きや坂道の多いコース、階段のあるコースを歩くなどです。腕を大きく振って歩く、重りを持って歩くとかスキップも良いですね。
お勧めの参考書「五十肩の評価と運動療法」
五十肩の運動療法をまとめられているのはこの本です。
五十肩だけというのはなかなか見当たりませんよね。
病期に分けて、それぞれ運動療法やホームエクササイズが記載されており、とても分かりやすくなっています。
そして何より写真や画像がカラーなので見やすいのが、凄く良いポイントです。
五十肩のリハビリを担当することがある人は一度読んでみるといいですよ。
まとめ
五十肩を甘く見ていたわけではないですが、理学療法士・作業療法士の介入によって回復の速度はかなり変わっていくはずです。
患者側からの視点で考えれば、自然に治るといわれても早く治る方法があればその方法を選択しますよね。
その方法が注射療法、薬物療法、物理療法であり、そして運動療法です。
ここでおさらいしましょう!
・理学療法士・作業療法士は五十肩への介入で改善を早めることができると考えています。
・五十肩を理解するために大切なことは「疼痛期」「拘縮期」「緩解期」の病期がある。
・五十肩は肩甲上腕関節の可動域制限と疼痛が主問題で肩甲胸郭関節や胸鎖関節、肩鎖関節は直接障害されない。
・姿勢アライメントが崩れていることがあり間違った運動学習をしている可能性がある。
・特に高齢者は老化や運動不足の影響を考慮して介入していく必要がある。
・五十肩の評価と運動療法の本はお勧め
以上、『五十肩の治療で悩んでいる理学療法士・作業療法士へ。目標は理想的な運動ができるような学習です。』 でした。