- リハビリ評価を早く終わらせたいのに、どうすればいいか分からない
- いつも評価で一単位が終わってしまって治療まで行えない
- もっと問題点を明確にしたい
とセラピストとして働いていて結果を出したいのに評価の段階で躓いていませんか?
実は「ボトムアップ・トップダウン」を理解することであなたの悩みを解決できるかもしれません。なぜなら、ボトムアップ・トップダウンの考えを使っていくと仮説と検証が行いやすくなり、目標達成に必要な評価がわかるようになるからです。
ボトムアップ・トップダウンが身につくことで必要な評価を優先的に選択して行うことで、患者さんや利用者さんの問題点を素早く見つけ出し、1単位(20分)内でも治療アプローチを行えるようになります。
記事の前半では『ボトムアップ・トップダウンについて』を解説するのでトップダウン・ボトムアップの知識を取り入れましょう。記事の後半にトップダウン・ボトムアップを使った『明日から使える実践法』を紹介します。評価に時間がかかったり、問題点が分からないことは過去に私も経験したことなので、体験談を交えながら話していきます。
この記事を読むことで介入時の評価への取り組み方が変わり、素早く評価が出来たり、問題点を把握することができるでしょう。
ボトムアップ・トップダウンとは大事な意思決定のスタイル
ボトムアップ・トップダウンはもともと企業経営で使われる言葉です。簡単に説明されているところがあったので、以下に引用させてもらいます。
ボトムアップ
ボトムアップとは、現場からの提案(意見やアイデア)を基にして、トップが「組織としての意思決定」を行う管理方式のこと。
「ボトムアップ」「トップダウン」とは?意味と違いが10秒で分かる (unchi-co.com)より引用
トップダウン
トップダウンとは、「トップ(会長・社長・役員など)」が「意思決定」を行い、下の構成人員へと指示を流し、下層部(現場)がそれに基づいて行動していく管理方式のこと。
「ボトムアップ」「トップダウン」とは?意味と違いが10秒で分かる (unchi-co.com)より引用
2つのスタイルがあると優劣が出てきますが、トップダウン・ボトムアップはどちらとも重要で2つの視点から見れる企業が優秀と言われています。
リハビリで使われるボトムアップ・トップダウンもほぼ同じ
リハビリの世界でのボトムアップ・トップダウンも考え方としては企業経営と同じで考えて良いです。ただし、評価のために用いる時には、「上層部」や「現場」という言葉を「機能」や「能力」などに置き換えて考えましょう。
そして、企業経営と同様にボトムアップ・トップダウンの考えはリハビリの世界でも両方から見られることが大切です。
実はセラピストになる前の臨床実習での経験はほとんどの人がボトムアップでの評価です。この評価方法は基礎→応用の考え方です。つまり、時間をかけてROM-t、MMT、感覚検査などの評価を行い、その検査結果から共通する問題点を把握し解決する方法をとっています。
ボトムアップでの評価方法は正確に問題手を把握しやすいので適切な運動療法をアプローチしやすいかもしれません。しかし、実際の臨床でボトムアップの評価をしていると時間がかかりすぎてしまうため、いつまでたっても運動指導は行えません。
外来リハビリなどでは初回で少しでも運動指導が出来ないと信頼が得られず、リハビリを断念されてしまいます。そのため、評価をしながら治療も行うことが大事です。
臨床例(骨折)でのボトムアップ・トップダウンの評価
ボトムアップ・トップダウンという考え方を理解できた場合、今度は実際の臨床現場で考えていきましょう。
私のイメージでは国際障害機能分類であるICIDHや国際生活機能分類のICFを頭に思い浮かべながら行っています。
今回は例として、転倒による大腿骨頸部骨折の症例でボトムアップ・トップダウンの説明をしていきます。
ボトムアップでの評価
ボトムアップの評価は基礎的な評価を行い、それらを統合して解決すべき問題点を見つけ出す方法です。理学療法評価では関節可動域テスト(ROM-t)や筋力検査(MMTなど)、感覚検査などが挙げられます。
国際障害機能分類(ICIDH)や国際生活機能分類(ICF)でいうと、機能障害にあたる項目から評価をしていくことになります。
- 機能障害レベルでの評価を行う
- 疼痛評価(痛みの程度、部位、視診など)
- 関節可動域テスト
- 筋力検査(MMTなど)
- 感覚検査
- 認知機能検査
- 能力を把握する
- 寝返り能力
- 起き上がり能力
- 立ち上がり・座り込み能力
- 歩行能力
- 主訴や希望と実施した評価から運動指導をする
- 自宅退院のため能力獲得
- 介助量軽減のための家族指導や自宅内環境調整
- 廃用症候群予防の運動指導
トップダウンでの評価
ICFは一番の問題を解決するために必要な情報を得るために評価を行っていく方法です。実際の臨床で一番の問題とは本人または家族の「主訴」となることが多いです。
トップダウンはICIDHやICFでいう能力や社会参加レベルの項目から評価していくことになります。
例えば、歩けないという社会的不利の患者さんから「家で歩けるようになりたい」と希望があれば立ち上がりや歩行能力を把握して、遂行能力が不十分な機能の評価(骨折の場合は筋力とか関節可動域、疼痛評価が多い)を行います。
ICFでの環境や個人因子も総合的に考慮して必要な評価を行います。例えば、環境面では自宅がベッドか布団かで必要な能力が変わっていきます。また個人因子で見れば高齢だと老化により転倒のリスクや認知面の低下などを考える必要があります。
そのため、必要によっては床から立つ能力や認知機能を評価します。非常に大事な考えですが、これには経験が必要ですので、これから成長していきましょう!
- 「歩きたい」という希望が聞かれる
- 現状から歩くために必要な評価項目を挙げる(本人だけでなく自宅環境、介護力も考慮)
- 動作能力の把握(どの動作ができて、どこに問題点があるか)
- 自立できていない動作を獲得するために評価を行う(ROM-t、筋力検査、疼痛評価など)
ボトムアップ・トップダウンのどちらも効果的に使いましょう!
臨床で適切かつ効果的な評価を行うためにはトップダウンで仮説と検証を行い一番の問題点を把握することです。上記でも述べたようにリハビリの世界でもボトムアップ・トップダウンはどちらも大事な考え方です。
一番の問題点を解決するためにトップダウンで仮説・検証を行いながら、ボトムアップの方法で筋力や関節可動域などの評価を行っていきましょう。
トップダウンの仮説・検証とボトムアップの統合と考えをすり合わせて本当の問題点を確認することで適切な評価と治療が行えるようになります。
明日から実践:トップダウンでの考え方
ここまで読んだ人はリハビリ世界でのボトムアップ・トップダウンの考えが分かったはずです。
まずはトップダウンの考え方を身につける必要があります。
繰り返しになりますが、ボトムアップで評価していたら時間が足りないから。
トップダウンで時間を掛ける評価を絞っていきましょう。
おすすめの実践方法は「直接聞く」
一番の問題点を見つける方法は患者さんや利用者さん、または家族に「どうなりたいですか?」と聞いてください。
つまり、どうやったらその目標が達成できるのかを考えていきましょう。
そのためには環境を変えれば可能なのか(例えば:手すりを付ける)、個人の能力が上がれば可能なのか(筋力向上、可動域拡大など)を考えることが大事です。
早速、明日から実践していきましょう!
「旅行に行けるようになりたい」
→もともとの生活能力、体力、移動手段の方法(杖の有無、車の運転が必要かなど)
「仕事復帰したい」
→仕事内容の把握、在宅ワークや座っての作業に変更できるかなど
目標が明確だと、先輩や同期にも悩みを相談でき、解決もスムーズになるはずですよ。
まとめ
今回はリハビリの評価をどうすればいいのか分からない人に対してボトムアップ・トップダウンの考え方を伝えました。
最後におさらいしましょう!
・ボトムアップは様々な評価から問題点を見つけ出す方法
・トップダウンは一番の悩みから必要な評価を行い、問題点を見つける方法
・どちらもとても大事な考え方ですが、トップダウンは経験が必要
・明日からはトップダウンの経験値を増やしていこう!
・実践方法は「どうなりたいですか?」に対して、回答していくこと。
トップダウン・ボトムアップの考え方が臨床で使えると目標が明確になって先輩や同期にも相談がしやすくなります。
このブログでは理学療法に関する勉強法を私の経験を通して書いています。
下記なんかも参考にしてください。