- 運動学を勉強する意味がイマイチ分からない
- 運動学が苦手だから他の人の勉強方法を知りたい
- 運動学を勉強したところでどんな風に活用すればいいか分からない
- もっと運動学で自己成長して臨床力をあげたい
上記の悩みを解決できるような記事を用意しました。運動学は解剖学・生理学と並んで理学療法士や作業療法士などのセラピストが活躍するには重要な基礎知識です。なぜなら、理学療法士の活躍する場面では運動療法で身体の動きについて理解する必要があるからです。
しかし、運動学も解剖学や生理学などと同様に広範囲で専門用語が多く、暗記をする必要のある学問であるため、苦手意識を持つ人もいるでしょう。苦手意識を克服して、運動学の知識を身につけることで身体上の問題点に対して適切な評価と治療が行えるようになります。
理学療法士や作業療法士に必須である関節可動域テストや筋力テスト、感覚テストなどの評価項目は解剖学、運動学、生理学の知識を理解することで評価の意義を知ることができ、適切な評価が行えるようになります。
初めて運動学に触れるのは養成学校です。学校ではほとんどの場合、教科書に沿って授業を進めていきます。この方法だと運動学がどのように臨床場面で活用できるかは理解できません。そこでこの記事では勉強の進め方も紹介していますので、読み進めていってください。
また、運動学の教科書は決して読んでいて楽しいものでなく、苦手な人であれば読む意欲が湧かないくらい濃い内容です。当時の私も運動学の教科書を見ただけで読む気がなくなっていました。そのため、運動学の必要性を理解するまでは予習・復習が後回しになり、苦手意識を持っていました。
苦手な運動学を克服するための方法を今回、10年以上の経験を持つ現役理学療法士の私が運動学の効果的な勉強方法をお伝えし、さらに臨床へ活かす方法も伝達していきます。本記事の内容は以下の4つです。
- 運動学は理学療法士の大切な土台
- 運動学は教科書で勉強するのが一番いい理由
- 運動学を勉強すると解剖学や生理学も理解できる
- 運動学を実践するための勉強法4選
この記事を読むことで運動学の勉強を苦手としている人でも、効果的な学習法や現役PTの実践的な知識や経験を得ることができます。解剖学でお悩みの方はこちらを読んでください。
【まとめ記事】 解剖学を克服! 学生からセラピストまでの効果的な6つの学習ガイド
運動学は理学療法士の重要な基礎のひとつ
運動学は理学療法士・作業療法士にとって解剖学、生理学と並んで重要な学問であり臨床の土台となります。なぜ運動学が理学療法士・作業療法士にとって不可欠なのか、その重要性について勉強方法を知る前に理解しましょう。
運動学は国家試験合格に必要な知識
運動学は理学療法士・作業療法士の国家試験では基礎分野として問題が多く出題されています。つまり、国が理学療法士・作業療法士として働くためには運動学を理解していないと資格は与えませんと言っているのです。また、基礎が安定していないとその上に積み上げてもすぐに崩れてしまいます。
国家試験のための勉強が必ずしも臨床で活用できるわけではないですが、資格を得るために知識を問う試験に運動学が多く出題されることは臨床でも必要だということが分かるはずです。
運動学の定義を理解しよう
運動学の定義を確認して勉強の必要性を理解すると苦手意識がなくなる可能性があります。『基礎運動学』から参考にすると、運動学とは運動を研究する学問です。『基礎運動学』では2つの主張があります。
『ひとつは運動学がそれ自体で科学とあるとする立場であり、他方は運動学の諸原理は解剖学、生理学および物理学から得ていることから、運動学は応用的研究であるとする立場である。』
基礎運動学第6版 P.1
もう一つが、
『運動学はその取り扱う領域により、何を理論的基礎にするかによって、多少の相違はあるが、幾何学と力学、解剖学、生理学は共通のものとなっている』
基礎運動学第6版 P.1
この定義から分かることはどちらの主張も運動学を理解するうえで解剖学、生理学は必須なことです。解剖学が構造を知る学問。生理学が機能を知る学問。運動学が人の動きを知る学問。このことを考えると運動学は人を治療するためには理解しておくべき分野となります。
臨床と運動学との関わり
実際の臨床で運動学がどのように理学療法士・作業療法士と関わってくるかを3つ挙げます。
- 運動学を理解すると適切な評価ができる
- 運動学の応用による機能改善ができる
- 実践的な応用と臨床への反映ができる
①運動学を理解すると適切な評価ができる
理学療法士・作業療法士は患者さんの運動や動作を評価し、適切な治療計画を立案することが大事です。運動学の知識を持つことで、患者さんの動作パターンや筋力・関節可動域などを客観的に評価することができます。運動の原理原則を理解することで、患者さんの問題点の根本的な原因を特定し、効果的な介入ができます。
②運動学の応用による機能改善ができる
運動学の知識があればあるほど、患者さんの機能改善に直結します。運動学を活用し、適切なエクササイズやリハビリテーションプログラムを設計することで、筋力、柔軟性、姿勢制御などの身体機能を改善することができます。運動学的なアプローチに基づくトレーニングや運動療法は、患者さんの生活品質の向上や再発予防にも大きな効果をもたらします。
③実践的な応用と臨床への反映ができる
運動学は臨床において、患者さんへのアプローチ方法の選択ができます。運動学の理解を基にした動作分析や動作最適化により、日常生活やスポーツパフォーマンスの改善に貢献できます。また、運動学の知識を応用して、さまざまな疾患や障害に対して個別に適したリハビリテーションプログラムを開発することができます。
運動学の教科書が一番の参考書である
私が愛用していた勉強道具は学校指定で購入した「基礎運動学」という本でした。運動学を学ぶ際に、教科書は最も信頼性の高い参考書となります。以下では、なぜ運動学の教科書が一番の参考書とされるのか、特徴やメリットについてご紹介します。
教科書は初めて勉強する人でも段階的に学べる
運動学の教科書は、体系的に情報を提供しています。基本的な運動学の原理や理論、解析方法、応用技術などが段階的に解説されており、基礎から応用まで一貫した知識を習得することができます。
教科書を読むことで運動の情報を一から学べることができます。そのため、後述しますが、運動学の本には解剖学や生理学、物理学の内容も載っており、一冊で複数の科目を勉強できてしまいます。
専門家によって作られたため高い信頼性と正確性がある
運動学の教科書は、専門家や研究者が執筆しています。そのため、正確な情報や最新の研究結果が反映されており、信頼性が高いです。また、教科書は査読プロセスを経て出版されており、専門的な知識と情報の精度は正確になっています。そのため、初学者でも比較的分かりやすく、正確で信頼性のある情報を得られるのです。
内容が難しすぎると感じる場合は一度教科書から離れて、少し難しいと感じる書籍から始めて運動学の理解を深められるようにしましょう。信頼性と正確性の高いのは教科書ですが、内容が理解できないと勉強を継続することが難しいからです。教科書が難しいと感じた人はやや大きめの書店に行って一般向けの本を購入してみましょう。学生の場合は養成学校の図書館で分かりやすい本を探す方法も良いですね。
イラストによる視覚的なサポート
運動学の教科書は、図表やイラスト、グラフなどの視覚的な要素を多く含んでいます。これにより、複雑な運動学の概念や理論を視覚的に理解しやすくなります。
運動学の内容は文字だけで理解することは難しいです。そのため、教科書に載っている絵やイラストを描いて覚えましょう。例を挙げると、運動麻痺に関わる錐体路障害などの走行ルートは文字だけでなく、絵で表せたほうが理解が早くなります。
網羅的に幅広くまとまっている
運動学の教科書は、多くのトピックやテーマをカバーしています。また、教科書には参考文献や追加資料も記載されており、さらなる学習のための情報源となります。以上のことから教科書での勉強は運動学の基礎を身に付けるのに適しています。
網羅的に運動学を学んだうえで自分の得意または不得意の分野が出てくるでしょう。その場合は教科書ではなく、より専門的な参考書を手に入れて知識をつけていきましょう。
私が運動学の苦手意識がなくなったきっかけは起始・停止
最初は基礎運動学も分厚い本なので苦手意識がありました。しかし、理学療法士・作業療法士として働くうえで運動学の勉強をする意味が分かったあとは継続して勉強できるようになりました。つまり、人には目標が必要ということです。
私の場合は「起始・停止」を覚えるようになってから運動学や解剖学・生理学との点と点が繋がったため、勉強が苦痛にならなくなりました。具体的にいうと、筋肉の起始・停止を覚えるときに骨と筋肉の名称、支配神経、作用などを覚えますよね。
例えば、大腿直筋であれば腸骨の下前腸骨棘から膝蓋靭帯を介して脛骨の脛骨粗面、支配神経は大腿神経でL3~4、作用は股関節の屈曲、膝関節の伸展、外転です。
大腿直筋の起始停止をイラストとして覚えるためには解剖学的知識が必要になります。また、どのように収縮することを理解するための生理学的知識を頭に入れることで収縮の仕方が分かり、運動方向を理解することができます。
起始停止を覚えることで解剖学知識、生理学知識が活かされることを知ってから楽しくなりました。楽しくなってしまえば、後は勉強が続けられるようになります。
運動学の知識は動作分析にも必要なので、立ち上がりや歩行の知識も勉強しますし、運動負荷量なども基礎運動学で勉強していきます。運動学は自身で体感できるものが多いので、実際に体感しながら勉強していました。
【新人理学療法士・作業療法士へ】運動学の勉強は教科書で行え!
運動学を勉強すれば解剖学も生理学も勉強できる
上記でも語りましたが、基礎運動学で勉強した私は、解剖学も生理学もここから理解し始めました。なぜなら、運動学は、身体の運動や動作の科学的な解析を行う学問ですが、その学習過程で解剖学や生理学の知識も同時に身に付けることができるからです。
そのため、運動学の本に記載されている解剖学や生理学の情報はすべて運動療法に必要な基礎的な情報なのです。
実際に臨床で活躍するためには解剖学も生理学もそれぞれの専門書で知識を深めていく必要があるとは思いますが、運動を知るということに関しては基礎運動学で十分に勉強することができます。
解剖学との関連性
運動学の学習においては、筋肉や骨格系統の解剖学的な知識が重要となります。運動学では、筋力の発揮や動作制御、関節の可動域などを解析するために、身体の構造や筋肉の配置、骨格の動きなどを理解する必要があります。
運動学を学ぶことで、解剖学的な知識を補完しながら、身体の動作や運動機能に関する理解を深めることができます。
生理学との関連性
運動学の学習を通じて、筋肉の収縮やエネルギー代謝、神経系統の働きなど、生理学的なプロセスについても理解することができます。たとえば、運動中の筋肉の疲労や回復、運動における心血管系統の変化などは、生理学の知識を基に運動学的な視点から解析されています。
運動学を学ぶことで、生理学的な側面も考慮しながら身体の動作や運動能力を評価する能力を身に付けることができます。
たった1冊で解剖学や生理学が勉強できる運動学の本『基礎運動学』を紹介
運動学を臨床で活用する4つの方法
繰り返しになりますが、運動学は解剖学・生理学と並んで大切な基礎知識です。しかし、基礎知識を理解しただけでは臨床では役に立ちません。以下に、知識を活用するには4つの方法を紹介します。
- 職場で先輩から教わる
- 参考書を買って本で勉強する
- 研修会に参加する
- 配信サービスを利用する(リハノメ)
職場で先輩から教わる
職場で経験豊富な先輩や上司から運動学の知識や応用方法を学ぶことは非常に有益です。彼らは実際の臨床現場で運動学を活用し、患者さんの評価や治療計画に役立ててきた経験を持っているからです。先輩セラピストから直接指導を受けることができれば、実践的な視点や臨床におけるコツを学ぶことができます。
職場に先輩セラピストがいる場合はバイザーという形でサポートを受けることができます。特に新人時代は先輩セラピストの臨床を見学して質問することで運動療法の考え方や知識の活用方法を教わりましょう。
この仕事の面白いところは理学療法士や作業療法士は一人ひとりで考え方が異なるので、同じ目標なのに運動指導の仕方が違うことです。職場に多くの先輩がいればたくさん質問をして、様々な考え方を聞きましょう。また、どのように基礎知識を活かして臨床に役立てているのか学びましょう。
見学できるのは学生時代か新人の間だけで、この時期を逃すと見学する機会がなくなってしまいます。これから新人として働くという人はこの見学という貴重な時間を有効に活用しましょう!
参考書(本)を買って知識と技術を身につける
運動学の参考書を購入し、自己学習を行う方法も効果的です。運動学の教科書や専門書は、基礎から応用まで幅広い知識を提供しています。メリットとして自宅や自分のペースで学習することができ、復習することも可能です。
しかし、参考書をやみくもに買ったところで読まなければ意味はないですし、読んでも理解しなければ臨床で使うことができません。個人的には購入する前に書店に行って本をパラパラと眺めてみてください。手に取って読んだ本で読みやすいと感じた本を購入したほうが臨床にも活躍できる本に巡り合えるでしょう。
ただし、理学療法や作業療法に関わる参考書は紀伊国屋書店などの大きな店舗にしか置いていません。上記でも述べていますが、参考書は教科書と違って絵や写真が多く、説明も分かりやすいので実際に手に取って読んでみる価値はあります。
特に私が初学者におすすめなのが、『運動と医学の出版社』から出版されている参考書です。『運動と医学の出版社』から出ている本は図やイラストがカラーであることが多く、わかりやすいため新人から経験者まで幅広く対応しています。
『運動と医学の出版社』は電子書籍での販売もしているため、本の置き場所がないという人も安心できますね。運動と医学の出版社のホームページはこちらから
研修会やセミナーに参加する
知識や技術を獲得するにあたって一番効率のいい方法は知っている人から教わることです。運動学に関連した研修会やセミナーに積極的に参加することで、専門知識を深めることができます。研修会では最新の研究結果や臨床における実践的な情報が共有されることが多く、他の専門家や同業者との交流の場にもなります。
多くの研修の場合、運動学などの基礎知識は午前中や開始してすぐの時に必要知識として説明があります。その後、その知識に沿って、実技の場合は実技練習を、座学の場合は実際の症例をあげて講義が進んでいきます。
そのため、研修に参加することで解剖学や運動学・生理学などの基礎から運動療法までの応用が一日で学べることができるのです。実技系の研修に行く場合は一人で参加しても、練習でだれかと組むため、そこでもいい刺激をもらえます。
注意点として、研修会の参加費は10000円を超えるものがあり、すべての研修会に参加するのは不可能です。お金を払うことで無料で参加できる先輩の指導や本での勉強よりも集中して臨めるため、明日からの臨床で使える知識と技術を身につけられるでしょう。
配信サービスを利用する(リハノメを利用する)
やる気はあるけど、読書は苦手だし、参加したいセミナーは近くにないからどうやって勉強しよう。
こんな場合は動画配信サービス『リハノメ』を活用してみましょう!
近年、運動学の学習に便利なオンライン配信サービスが増えてきました。『リハノメ』では動画コンテンツやウェブセミナー、オンライン講座などを通じて、運動学の理論や実践的な応用方法を学ぶことができます。オンラインセミナーでは柔軟な学習スタイルや自分のスケジュールに合わせて学ぶことができるため、忙しい臨床の現場でも無理なく学びを深めることができます。
『リハノメ』は毎月動画が上がり、どの動画が何日にアップされるかのスケジュールがされているので、登録して動画をみて臨床に役立てましょう。
オンラインセミナーは内容としても普通の研修と一緒で最初は基礎的な要素を勉強(復習)して、後半に臨床で役立てるために応用しています。オフライン研修に参加することとの違いは自分の好きな時に視聴して勉強が可能であることです。
リハノメの場合はオフライン再生も可能なので、あらかじめダウロードをすれば出先で時間ができたときに通信制限やバッテリーの消耗を気にせず視聴することが可能です。
他の利点として配信サイトと違い、OTやSTの人も講師として配信しているので、他セラピストを勉強できるチャンスです。1か月のお試し登録もありますので下記バナーからとんで登録しましょう。
まとめ
今回は理学療法士や作業療法士として働くには必ず重要な運動学についてまとめました。あなたはこの記事を読んで運動学が苦手ではなくなったことでしょう。簡潔に記事の内容をおさらいします。
運動学がなぜ理学療法士・作業療法士になるうえで学ぶ必要があるのかを理解することが初めの一歩です。運動学は理学療法士の大事な土台であり、患者さんの動作や運動機能を科学的に解析するための知識です。そして、運動学を勉強していくと同時に解剖学・生理学の知識も結びついていきます。
臨床までの活用方法は自分で考えるよりも先輩の力を有効に使いましょう。今回は運動学を効果的に学ぶための方法として、以下の4つを紹介しました。
①職場で先輩から教わる②参考書で勉強をする③研修会に参加する④動画配信サービス(リハノメ)を利用する。
『リハノメ』はお試し登録がありますが、それでも有料です。しかし、理学療法士協会に入会している人はクラブオフを利用することで安く利用することができます。他の配信サイトよりは金銭面でもおすすめです。
運動学を含め解剖学や生理学の基礎を理解することができればどのような臨床場面でも対応できることでしょう。早速、挑戦していきましょう!