寝返りや起きる時に腰が痛いんです。
このように訴える患者さんを過去に何度もお会いしてきました。
やはり腰椎圧迫骨折後や変形性腰椎症などで腰痛を感じる方に多い印象です。
今回は、理学療法で動作指導をした後に腰痛が軽減した経験を紹介します。
どんな指導をしたのかを先に伝えて、考察を後に書いています。
この記事を読むことで明日から臨床で使える考えが増えるはずです。
症例紹介
- 70代 女性
- 診断名:変形性腰椎症
- 1か月くらい前から腰痛を強く感じた
- 以前は週3回ラジオ体操をしていた
- 下肢の筋力低下、関節可動域制限は著明に認めず
- 下肢のしびれの訴えなし
- 寝返り動作困難
- 起き上がった直後の座位で痛みが強い
- 座位姿勢胸椎後弯
どんな動作指導をしたの?
では、どんな指導をしたのでしょうか?
声掛けだけでも動作が出来る人もいれば、動きを誘導して動き方を覚えてもらう人もいます。
「身体を丸めるように起きてください」
寝返り・起き上がりともに身体を丸めて起き上がるよう指示を出してみます。
指示を出すときのポイントが2つあります。
①頸部(首)を動かしてください
1つ目のポイントとしては、まずは頸部(首)が寝返る側に向いてもらうこと。
なぜなら、頸部が動けば運動は連鎖(生成)して上肢・体幹・下肢も同側に動くよう準備し始めるからです。
②膝は立ててください
2つ目のポイントは膝を立ててから、寝返る方向に下肢を倒していくこと。
なぜなら、身体を動かすときは支持基底面(床と接する面積)を狭くした方がスムーズだからです。
なるべく身体を小さくたたんだ方が動かしやすいということですね。
考察(運動生成が出来ていなかった)
この症例の場合は、週3回ラジオ体操を行っていたこともあり、運動習慣はあったことがポイントです。
また、腰痛増強の原因が不明瞭でした。
そこで、日常生活を送る中で正常動作から大きく逸脱している動作や姿勢があるのではと考えました。
動作分析(寝返り、起き上がり)
寝返り動作(分析)
背臥位は姿勢から動作を開始してもらいました。
どちらの方向の寝返りでも下肢が初めに動き、次いで上肢、頸部・体幹と動いていきました。
また、寝返り側と反対側に下肢を出し、床をけることで寝返り側に重心を移動させていました。
この寝返り方だと半側臥位になるあたりで頸部・体幹が取り残されることになります。
下肢が床を蹴ることで伸展方向の運動になるため、体幹も伸展方向へ運動が生成していきます。
一方、上肢は寝返り側に手をついて体幹を移動させようとしていました。
下肢・体幹は伸展、上肢は屈曲と上半身と下半身で生成する運動方向が逆になってしまっていたのです。
その時に腰痛を訴えていました。
起き上がり動作(分析)
側臥位までは起き上がり動作と同手順です。
そこから身体を起こし、座位姿勢をとるために上肢を支えにします。
しかし、寝返り動作時の運動連鎖(生成)で腰痛を感じていたため、腰部に防御性収縮が入ってしまっていたこと。
また「起き上がるときは腰が痛い」の考えが頭にインプットされてしまい、さらに脊柱を動かさないように起き上がろうとします。
そのため、オンエルボー(肘をつく)→オンハンズ(手をつく)で身体を起こしていく時に際に腰痛が起きていたようでした。
今までの生活
- お仕事はしていましたか(していますか)?
- 運動習慣はありましたか?
- 過去に大きなケガや病気をしたことがありますか?
私は上記の内容は問診で必ず聞くようにしています。
・10代は運動していたけど、出産してからは子育てに追われてしまってなかなか運動する時間が取れなかった。
・仕事一筋で一日中デスクワークや作業をしていてセルフケアをする時間が取れなかった。
色々な人がこの内容のようなことを言っていた印象でした。
共通することは運動機会の消失とルーティンワーク(いつもと同じような動き)しか行っていないということです。
つまり、いつも同じような関節可動域と筋力しか発揮していないことになります。
そのため、徐々に身体は柔軟性は失い、筋肉が収縮しにくくなり、痛みが発生してしまうと考えています。
これも腰痛が発生してしまった理由の一つではないかと考えています。
私は一日1回でいいので、普段しないような動作をするように指導もしています。
まとめ
今回の症例でのポイントは
- 身体を丸めるようにして起き上がるよう指示する
- 運動習慣や生活状況を聴取しておく
後は動作分析能力を高めていく必要がありますね。
同じ悩みを持つ人がいたら是非教えてあげてください。