- 片脚立位動作が日常生活にどのように関わっているか知っていますか?
- 日常生活での片脚立位保持をできる意義や効果について知っていますか?
われわれは片脚立位をバランステストとして活用しています。長時間、片脚立位を保持できればバランスが良いと言えます。
ただし、片脚立位保持できたからと言って、日常生活のどの場面で関わっているのかと疑問に感じたことはありませんか?
答えを先に言ってしまうと、片脚立位が保持できることは日常生活の立位動作が安定します。もう少し具体的に内容を知りたい人は読み進めてください。この記事では片脚立位の意義や効果について詳しく解説します。また、片脚立位が日常生活のどの動作に関わっているのかいくつか例を挙げます。
片脚立位の重要性や効果を知ることで、普段の生活の何気ない中にも片脚立位を行っていることが知れます。
片脚立位の記事を他にも書いています。詳しくなりたいならば読んでください。
静的バランスと動的バランスを知ろう
「バランス」という言葉を辞書で引くと、概ね釣り合い、均衡または調和と解説されています。つまり、「バランスが良い」は安定しているということです。そして、バランスには静的バランスと動的バランスに分かれます。
静的バランス
静的バランスとは、その状態を保ち続けるための能力です。人間の身体は、常に重力による影響を受けています。重力の影響により、体重は地面に対して下方向に働く力として作用します。一方で、筋肉や骨格が、重力に対抗することで身体のバランスが保たれます。
例としては立位姿勢や座位姿勢などがあげられます。片脚立位保持は静的バランスにも含まれます。
動的バランス
動的バランスとは、動きを伴いながら転倒しないようにバランスを保ち続けられる能力です。
ダイナミックバランスの維持は、スタティックバランスよりもより高度な調整が必要とされます。なぜなら、身体が動くことで重心が変化し、体の各部位への力のかかり方も変わるからです。ダイナミックな動作においては、より速度や方向の変化が伴うため、バランスを保つためにより細かい調整が必要となります。
例としては立ち上がりや歩行などです。片脚立位保持中でも動きが伴えば動的バランスとなります
動的バランスの向上は、スポーツやフィットネスのパフォーマンスを高める上で重要です。例えば、サッカーやバスケットボールなどの競技では、ダイナミックな動きが頻繁に行われます。動的バランスが向上することで、スピードや反応性の向上、怪我の予防、などに関わってきます。
バランスが崩れる4つの原因
では、バランスをとるためにはどうすればいいのでしょうか?
重心が支持基底面内にある安定性限界から逸脱しないように制御することがポイントです。
バランスに影響を与える要素
人がバランスを保つためには様々な影響があります。
・運動機能・・・筋力や瞬発力、柔軟性など
・感覚機能・・・表在感覚、深部感覚、特殊感覚
・平衡機能・・・平衡反応や立ち直り反応など
・その他 ・・・硬い地面や柔らかいゴムマットの上など
これらが影響しあって支持基底面内にある安定性限界に重心を留めようとします。
逆に考えると何かの機能が低下または環境変化が起こると他の機能で代償してバランスを保つ必要があります。
支持基底面と安定性限界
支持基底面
物体を支持するために必要な床面積です。サイコロで例ると、地面と面している部分のことを指します。
立っている人の場合は2本の足が地面と接しているのでそれぞれの接地面とその間の面が支持基底面になります。支持基底面が広ければ広いほど安定します。つまり、杖をつくことで接地面が3点になり、支持基底面が広がり、より安定します。
安定性限界
支持基底面の中で身体重心が安全に移動できる範囲のことです。安定性限界を超えるような重心移動では姿勢を保つことが出来ず、転んでしまいます。
手をついたり、足を出すことで支持基底面を変化させ、転倒を防いでいます(立ち直り反応やステップ反応)。
片脚立位はバランス評価の1つとして有用
片脚立位は主に静的バランスの評価の1つです。つまり、座位や立位姿勢などの見た目では動きがなく、その場に居続ける能力を見ています。
片脚立位は両脚立位と比べ、支持基底面が狭くなるという環境が変わります。その環境の変化に対し、運動機能、感覚機能、平衡機能が働き、重心を制御できるかを観る必要があります。
他のバランス評価方法と違いシンプルなため、どんな人にも混乱なく遂行しやすいのが特徴です。
私が評価する際は10秒、30秒、1分を基準にしています。
特に対象者が高齢者の場合は10秒以内は転倒リスクが高い、30秒は許容範囲、1分は安定(転倒リスクが低い)と考えています。
また、その際にどのようなバランスの取り方をしているかも評価をしています。
詳細な評価判定や実施方法は異なる部分があると思いますが、酒井医療株式会社様の説明が分かりやすかったので引用させてもらいます。
1) 転倒歴のある者では30秒以内
2) 健常高齢者で15秒、要支援以上では3秒以下
3) 後期高齢者で転倒群は1.7±1.5秒、非転倒群では6.3±6.5秒
4) 一般高齢者で男性60歳代46.2±20.5秒、70歳代31.8±23.5秒、80歳代20.0±11.4秒、女性60歳代45.1±19.5秒、70歳代32.0±21.9秒、80歳代14.6±16.2秒
酒井医療株式会社HPより引用
片脚立位テストだけでバランスの良し悪しを決めるのは不十分です。他にもファンクショナルリーチテスト(FRT)や2ステップなどのバランス評価を併せて行い、動的バランスも含めて精査をしていく必要があります。
片脚立位は歩きや階段、着替えなどで関わってくる
片脚立位が出来ると姿勢を崩さず(転倒せず)に重心を支持基底面内の安定性限界にとどめることが出来ます。そのためには、環境に合わせて身体機能、感覚機能、平衡機能が上手く働く必要があります。
重心が大きく動こうとした場合はこれらの機能が働き支持基底面から逸脱しすぎないようにしているのです。これは歩行や立ち上がりの動作の最後で動きを止める時にも必要な能力です。つまり、日常生活の立位動作全てに関わりがあると言えます。
特に日常生活で片脚立位をとらなければいけない動作は以下のようなものです。
- 歩き(走り)
- 階段昇降
- バスや車の昇降(ステップ)
- ズボンや靴下などの着替え
- 浴槽またぎ
- 立って靴の着脱
終わりに
この記事では、日常生活の片脚立位のかかわりについて解説しました。その中でさらに静的バランスと動的バランスについて解説しました。静的バランスは静止した状態でのバランスを指し、日常生活での姿勢の維持や安定性に重要です。動的バランスは身体が動いている状態でのバランスであり、スポーツやフィットネスにおいてパフォーマンス向上や怪我の予防に欠かせない要素です。
臨床を行っていると今回のきじのような疑問を覚えることがあると思います。もしかしたら私以外も片脚立位に疑問を感じた方がいたのではないでしょうか?そのような悩みがこのブログで解決できたら嬉しいです。
バランスは日常生活だけでなく、スポーツやフィットネスにおいても重要な要素であり、向上させることでより健康的で充実した生活を送ることができます。バランスを意識し、トレーニングを通じて身体の調和を追求していきましょう。